インド更紗 地白ロータス•ペイズリー文様 / 18-19c
¥50 税込
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発色(定着)のし難い 木綿 に赤をはじめとした 媒染(*1にて詳細あります)
による紋様染の技法をいち早く見出し世界中を魅了した染織裂 インド更紗
こちらの更紗は、ヨーロッパ諸国による東インド会社統治時代(〜1833)に
インドでしか成し得なかった茜や藍の媒染技術を用い
世界各地の需要に沿ったデザインで作られ輸出されたもの。
中央のモチーフは遠目から見ると1つの大きな蓮の花のように見えますが
近づいて見ると8弁のパルメット文様の中に可憐な花びらを持つ花々が咲き1つの文様を構成しているのがわかります
その周りには 風にたなびくたわわに花を付けた立木文様(ペイズリー)がリズミカルに並び
時には版がちょっとズレてる箇所があったりもして
ああ、人の手仕事だなあ とほっこりさせられながら。
その周りには花唐草が生い茂り
エンドボーダーには中央のメダリオンで用いられたよりもひとまわり小さなパルメット
こちらにも花々が咲いて(同じ連続文ながらこちらは染め分けて白とグリーンを反復させています。)
文様から鑑みるにインド→ペルシャ輸出向けかと思いますが
時に輸出用をインド現地で用いた例もあるようですし
統治国(ヨーロッパ)へと渡った例も有るようです、あくまでも柄行きからの推定とはなります、悪しからず。
裏打ちの文様は薔薇の花に集う蝶々でしょうか、
地の黄緑色がとても優しく朗らかな印象の
同じくインドの別地域で得手とした手紡ぎ手織り木綿の朴訥とした生地に木版更紗が取り合わせられています。
そこへ額縁状に藍染木綿(番手の細やかな木綿)が当てがわれ、
表地と裏地の間に綿を敷き、絹糸によるステッチで補強と用のためのキルティングがなされています。
当時のオリジナル仕立てのまま伝わったもので、細やかなさざなみが美しい針仕事も見所の1つかと。
長い布生の間に、何らかの出来事が有った様で
数カ所に小穴が空いています
(白い壁面にて愛でる分には目立ち難いかと思いますが捉え方には個人差もあるかことと思います)裏からの方が穴の箇所がわかりやすいため、画像13枚目に○印で示しました。
(穴の径は3-10mmほど、目立たぬその他の小穴に関しても見落としあるやも知れません。)
その他、古いお品ですので擦れて中綿が覗いている箇所や染み、色移りなどが見受けられます。
手触りは非常に優しくそして軽やか。
是非この機に現物に触れていただきたいインド更紗です。
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● インド更紗 地白ロータス•ペイズリー文様 / 18-19c
推定使用地 / ペルシャ(あるいはヨーロッパ)
表布:
製作地 /インド アンドラプラデシュ州 マスリバタム
18c-19c
カラムカリ(手描き)+ 木版捺染、媒染、防染
天然染料 藍、茜、ウコン(または柘榴から媒染により黄色が出せたようです) 緑は藍との重ね染め
。。。
裏布:
製作地 /インド ラジャスタン州 サンガネール
19c中後期頃
手紡ぎ手織り木綿地(カディコットン)に 木版捺染 媒染および防染
染料は同上
約 W89 L146 cm
(状態などは画像をよくよくご覧くださいませ、他に必要な画像がございましたらお申し付けください。)
* 画像のお色味は 18枚目 が現物により近いかと思います
実店舗にて直接ご覧頂けます
。
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なお、最終画像及び以下「 」内の解説キャプションは
製作年代および地域推定の参考資料として、画像の拝借及びキャプションの抜粋掲載をさせていただきました。
出典:国立文化財機構所蔵品統合検索システム内コレクションデータより
( https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/TI-181?locale=ja )
「 キルティング敷物 メダイヨンペイズリー額型文様更紗
中央部分には花形をしたメダイヨン、その周囲にはペイズリーと称される先の尖った花束文、周囲には花唐草文様を、木綿地に木版の型で捺染した更紗です。文様はいずれも細密にあらわされ、18世紀におけるインド更紗の高度な技術をうかがわせます。 」
* 上記のお品と比べますと、今回ご紹介のお品は
モチーフの簡素化(地紋や染めの箇所省略など)が見られることや、
その他の当店手持ちの染織資料と今までご縁をいただいたお品との比較での見解にてご案内させていただいております。(万が一、見解違いなどございましたらご教示いただけますと幸いです。)
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(*1) 捺染 とは
こちらのインド更紗は カラム と呼ばれる手描き用のペン と 木版 による 捺染技法 により文様が染め出されたものとなります。
地となる木綿はそのまま染料となる植物染料で文様を描いても定着せず水などで流れ落ちてしまうため、先ず初めにミロバランの実(タンニン酸)と水牛のミルク(動物性たんぱく質)を用いて下染処理を施します。
次の工程は天然染料染で染色を施すのですが、まだ直接紋様は描けません
ここからは科学反応の世界です。
この場合ですと、インド茜を煮出した液に浸し染めした時に 黒 と 赤 の文様を残したい箇所 に先ずは 木版(およびカラム) でそれぞれを描き、それからようやくインド茜の染液で浸し染に入ります。
鉄塩 = 茜に反応して黒いラインとなっています
明礬(ミョウバン)= 茜に反応して赤い花文様となっています
浸し染することでインド茜の染料が媒染剤に反応し、それぞれ黒と赤に発色し定着します。
更に、青の文様は(藍染したく無い箇所)を先ずは全て刷毛又は木型などで蠟防染した後に藍液に浸す(あるいは藍をひく)のです。
(先ほど茜染して仕上がった箇所も全て伏せます。)
それが終わったら蠟を取り除きます。
最後に、白い下地に残った茜の染料を、牛糞を溶かしたアンモニア成分の中で何度も洗う工程を経てそうしてようやく完成します。
——— 参考文献 ———
京都書院 世界の更紗
京都書院 インド染織美術
。
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。
染織工程だけでも気の遠くなる作業の繰り返し、今の時代よりもっと緩やかでそして豊かな時間を感じます。
PS:これはインド更紗だけに限らないことなのですが、
私たちよりも永くこの世に在るものが、私たちと同じ人間の手によりそれぞれの生活様式の中、必要に応じて祈りや願い
そして用と美しさと共に作り出されていたことが素晴らしいと思う次第です、
何より国も時代も宗教概念も超えて、根本で心が動くことが純粋に喜びの一つです。
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