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祈りの刺繍裂 / クルーウェルワーク

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クルーウェルワーク(クルーエルワークとも)は17c頃のイギリスで全盛期を迎え
周辺の西欧諸国に伝播して行ったと言われる
無染色のリネン地(画像18枚目右画像)に、染めわけた羊毛糸を刺しモチーフが表された刺繍工芸です。

日本の工芸同様
当初は、王侯貴族や教会建築などの屋内装飾の用として発展した針仕事。

故に、民のものとして広まる迄は
中世のゴブラン織や宗教絵画のモチーフを手本にしながら、
キリスト教の修道女たちにより作られたものも多かったそう。

こちらの刺繍モチーフは、旧約聖書にも登場する
鳩とオリーブと言う事からも
使徒職の手によるものではー
と思いを巡らせてみたり。

テントステッチと呼ばれる技法で、地までもが埋め尽くされて
(後の時代になると、地刺しは簡略化されてモチーフ部分のみとより簡素に)
刺繍ならでは、手本にしたであろうゴブラン織の曲線的な表現をすべく
極力なだらかにと表の整然とした表情からはとても想像出来得ない裏側を、
行き交う色糸たちが物語っているようです。

鳩と、それから縁取りの細いレジメンタルボーダーの部分のみ
全体的に使用している糸よりも細番手の羊毛糸を用いる事で
モチーフに奥行きが生まれているのも作り手の工夫が感じられる箇所。

そして心惹かれた優しい黄色。
ヨーロッパですと、カモミールからの色味でしょうか、
オリーブと鳩は裏の色糸を見ると薄っすらと緑がかっています、
緑はかつてより1つの染料だけでは出し難い(黄+藍)希少な色と察しています。

生まれた時にはおそらくもっとコントラストの強い作品だった物が
経年により退色し、全体的に穏やかにモチーフ同士が共鳴している印象を受けました。

今この姿で出会えたからこそ私自身は惹かれました。

13cmと細い織幅のサイズ感から憶測するに
祭祀の折に用いられた卓布などの縁取りとして使われたものか
あるいは、ベッドカーテンパネルなどに用いられていたものかと。
(幅はオリジナルサイズで両耳が有ります、長さは本来どのくらい有ったか不明ですが、端が切れていた為、当店にてまつり縫いしたもの。)

いつの時代も変わらぬ、
平和への祈りが込められた刺繍です。


一部参考にしております 
https://en.wikipedia.org/wiki/Crewel_embroidery

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● 祈りの布 / クルーウェル刺繍

イギリス(あるいは周辺西欧諸国)

19c初頭 - 中頃

サイズ ± W13 L90 cm
 
* 経年による羊毛の剥落がところどころに見られます、最終画像をご参照ください。

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# クルーウェルワーク
# クルーウェル刺繍
# ゴブラン織

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